ミッドナイト・イン・パリ
ギル(オーウェン・ウィルソン)は婚約者(レイチェル・マクアダムス)と共に、彼女の両親の出張に便乗してパリを訪れる。彼はハリウッドで売れっ子脚本家として成功していたが、作家への夢も捨て切れずにいた。ロマンチストのギルは、あこがれの作家ヘミングウェイや画家のピカソらが暮らした1920年代の黄金期のパリに郷愁を抱いており……。
「昔はよかった」っていう人って全世界共通なんですね。それは置いといて、でもその人が言う「昔」に生きる人にも、その時代にはその時代の不満があって、結局どの時代だって昔を羨むし、なんだかんだ今が一番いいのかもしれない。
そのことにギルは気づいてアドリアナを説得しようとするけど、それでも過去に残ると決めたアドリアナ。ギルがパリに残ると決めたのはそんなアドリアナを見たからかもしれない。自分が自分らしくいられる場所、人を選ぶことの大事さに気づかせてくれる映画。
はじまりのうた
ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、彼とニューヨークで暮らすことにしたグレタ(キーラ・ナイトレイ)。瞬く間にデイヴはスターとなり、二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、さらにデイヴの浮気が発覚。部屋を飛び出したグレタは旧友の売れないミュージシャンの家に居候し、彼の勧めでこぢんまりとしたバーで歌うことに。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられるが……。
ボヘミアン・ラプソディでは家借りて音楽を制作する過程のシーンが一番好きなんだけど、そういう音楽がだんだん出来上がっていくのを見るのが好きな人間にはたまらない映画。音が重なることでこんなに人の心を揺さぶることができるのか!という感動が本当に好きです。
グレタとデイブは音楽を通じて関係を築いてきたけど、「なぜ音楽をやっているのか?」ということに関して、グレタは「自分(とネコ)のため」デイブは「皆で共有するため」と実は根幹の部分で違っていて、そのことに音楽を通じて気づいてしまうグレタ。音楽はときに残酷なものになり得るんだなあ…と。
グレタもダンも自分の人生を揺るがすような裏切りを体験してきたけど、グレタは「自分のための音楽」ダンは「自分が本当に良いと思った音楽」という自分の音楽に対する価値観が最後まで揺るがないのが良かった。
エブリシング
生まれつき重病を患うマデリン(アマンドラ・ステンバーグ)は、衛生管理を徹底した家で、医師の母ポーリーンと看護師カーラと暮らしていた。ある日、彼女と同じ年ごろのオリー(ニック・ロビンソン)が隣に引っ越してくる。マデリンは、ガラス越しにオリーとメールのやりとりを重ねるうちに、彼に恋心を抱く。
邦画でありがちな病気の彼女が恋に落ちて実った頃に死んじゃう系の話ではなく、後半まさかの展開。
「愛は人を惑わせる」オリーの母が、父親と別れられない理由を尋ねられた時に言った言葉で、マデリンとオリーの出会いがまさにそうだけど、実はこの言葉はこの2人にとどまった話ではなかったという…。
愛こそすべて、愛する誰かこそが自分のすべてとなってしまったとき、人は思いもよらない行動にでてしまうかもしれない…。
マデリンが白い服なのと対象に、オリーは黒が好きで全身黒い服。きっとそれは彼の家庭環境が彼自身の暗い価値観に影響を与えているからで、マデリンに勇気をもらって母と妹と3人でニューヨークに戻り、そこで再会したときは白い服を着ていて、ありがちな変化の見せ方とは思うけど父親から無事逃げられて良かったねえとなった。
トールガール
187センチの高身長に悩み、目立たないようにいつも背筋を丸めているジョディ。交換留学生に恋したことをきっかけにコンプレックスを克服する決意をしたけど...。
コンプレックスまみれだった中学〜大学時代の私に見せてあげたい映画。
家族や親友がどれだけそのままの自分でいいと言ってくれても、自分自身がコンプレックス含めて自分だと認めてあげられないと自分のこと大事にできないんだよな〜。
家族や親友がジョディの素敵なところをちゃんと分かってることがジョディに伝わって良かった!特にダンクルマン!木箱〜!
留学生の気持ちもよく分かる。環境変わって人気者になって、みんなに嫌われたくなくて保身に走ってしまう…
自分が学校生活そんなに楽しめなかったからスクールものはキラキラしすぎてると辛くなるけど、トールガールはちょうど良いレベル。
サバイバルファミリー
鈴木家は、父・義之(小日向文世)、母・光恵(深津絵里)、息子の賢司(泉澤祐希)、娘の結衣(葵わかな)の4人家族。ある朝、目を覚ますと突然全ての電化製品が停止しており、鈴木家だけでなく近所中で同じことが起きていた。さらに電車も車もガスも水道も止まってしまい、家族全員途方に暮れる。そこで義之は、東京から出ようと決断し……。
昨今、SNSで人と人とがよりタイムリーに、簡単に繋がれるようになった一方で、身近な人ほど会話が少なくなってきていると感じている人も多いんでなかろうか。(うちも仲はいいけどそんな節ある)
そんな中、ある日突然スマホを始めとして電気が使えなくなったら?電子での関わりが断たれたら、身近な人と生身の会話をしながら助け合っていくしかない。電気が無い時代だってあったけど、いきなりその時代のように暮らせと言われても難しい。主人公の家族も衝突しながら、雨に打たれ川に流され犬に追われながらも助け合って家族の形を再構築していく姿にじんわりする暖かい映画。
特に川に流されるシーンはもっと悲しくすることは十分できるところだったけど、そこをお父さんのカツラのお陰で感情移入させすぎない淡々とした描写が良かった。
King Gnu 「Don’t Stop the Clocks」
2020年ハマった曲シリーズ①
昨年の暮れからKing Gnuの「Sympa」というアルバムをひたすら聴いている。
「Vinyl」が某ブログで紹介されてから存在は知っていたけれど、当時の自分にとっては大人すぎるかな〜という印象で留まっていた。
2019年にメジャーデビュー、ヒット曲「白日」でいよいよ名前が世に知れ渡ってからは逆に、わたしの「流行ってる曲敬遠しがち」癖が出てなかなか手がでなかったが、ついに紅白にまで出るということでようやく聴き始めた。
とりあえずApple Musicで再生回数の多い曲から…と思っていたら
なんやこれ…どれも良すぎる…
特に人がいっぱい書いてあるジャケットのアルバムの曲が印象に残ったので、今度はそのアルバムの流れで聴いてみたら、これもまたいい。
(人がいっぱい書いてあるジャケットのアルバム)
さくっと聴けるのに、映画を観たような充実感。
わたしはアルバムを聴くとき、最初はどうしてもアップテンポ・ミドルテンポの軽快な曲(このアルバムで言えば、「Flash!!!」「Sorrow」「Bedtown」)を集中して聴く癖があって
一方で、アップテンポ・ミドルテンポの曲だけハマるバンドは結局あまり深追いしない。
バラードを好きになると、いよいよこのバンドが好きになってきた…となるのだけれど、
「Don’t Stop the Clocks」
これがめちゃめちゃいい。
普通、ラブソングでの時間についての歌詞よくあるのは「時間よ止まれ」的なあれだと思うのだけど、こういうは未来への不安とか今が終わってしまうことへの未練から生まれるのかな~と。
King Gnuのこの曲は逆で、
「時計の針を進めて」
あなたとなら季節が巡り始める、変わりゆく季節を一緒に踊らないか、と
未来への信頼、希望を、極めてシンプルなアレンジと井口さんの優しく穏やかな声で歌っているのがとても良い。
バラードでこんなに響いたバンドは久しぶりで嬉しい。昔は大人すぎると思っていたバンドを聴くようになったのは、わたしも少しは大人になったということなのだろうか!
前述したけれど、「Sympa」は本当に良いアルバムなのでこれからも聴いていくことになると思う。もうすぐ発売になる「CEREMONY」もとても楽しみ。